鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

松籟

この山の ひょろりと高き いっぽんの 松のしたねに いこひてゆかな

 

ちち ち ち と鳴くに 仰げば ゆららゆらゆららと 松のゆれわたりつつ

 

山にして まなこつむれば 山なりの ひょうひょうとして 烈しきものを

 

持ちてこし 書(ふみ) かたはらに おきすてて 松風の鳴り きくこころかも

 

みあぐれば 松のあひまゆ 秋のひの陽(ひ)は やうやくに 晴れてくるかも

 

(昭和二十四年十月)