鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

昭和42年

門出

これから 出発する あなたたちよ この 秋の陽ざしは 何とまあ あたたかい やわらかい なつかしいいろを しているだろう それは 澄んでいるが 冷たくはない 明るいが 派手ではない じいんと 胸にしみこんでくる この 陽ざしのなかに 若く たのもしい あなたた…

色紙

いま わたしは色紙を買いにゆく 舗道わきに 生い茂った雑草が しだいに 弱って あんなにも 勢いのよかった 濃緑が ほとんど 黄色に変わりかけている 時雨である わたしは 身をすくめる 傘の向きは わたしの意のままにならない 風が あんまり烈しいから わた…