門出
これから 出発する あなたたちよ
この 秋の陽ざしは
何とまあ あたたかい やわらかい
なつかしいいろを しているだろう
それは 澄んでいるが 冷たくはない
明るいが 派手ではない
じいんと 胸にしみこんでくる
この 陽ざしのなかに
若く たのもしい
あなたたちの 姿がある
愛情がある
誓いがある
結びあった あなたたちの手は
菊の 花びらのように
香りたかく
そして
充実している
これから 出発する あなたたちよ
この世のなかの たった二人が
この世のなかの 唯一の二人なのだ
耳をつんざくような 雷鳴が来る
押しながすような 激流が来る
凍てつくような 吹雪が来る
そこに あなたたちは 立つ
じぶんの足で しっかりと 立つ
そこに あなたたちの 力がある
若い 愛情に満ちた
ほんとうの 力がある
これから 出発する あなたたちよ
さあ
しずかに 祝杯を あげよう
(昭和四十二年十一月)