鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

友情について

- 神谷良平兄に

 

遠くへ行ってしまうという友よ

かつてぼくが君であり

君がぼくであった はるかな時代・・・

それは神話だったろうか

 

いや いや

そのまま生きつづけたぼくらにとって

狂おしい一頁は過去ではない

 

薄倖な詩人が愛した そのやさしい

田舎町へ行ってしまう友よ

 

ふりつむ雪のうえに

ぼくらの過ぎさった友情のあとを記そう

死んでいった若い友人たちの願いを

はるかな月光に投げかけよう

 

幼かったぼくらの

溢れる愛情を

はてしない

五月の空に・・・

 

(昭和三十二年五月)