2017-07-02 金魚のうた 詩集 詩 昭和28年 このぎゃまんの獄(ひとや) とばり重く垂れ あかあかと尾ひれみじかく ひょうひょうと飛ぶは いかにもこれは汝れが夫(つま) 眼いよいよ爛として内に燃ゆるもの 全身これことごとく黒衣なるは汝れが妹(いも) われら捕はれの身にしあれば 天を仰いで嫋々とあゆみ 地に伏して午睡すれば 緑なす浮藻ゆたゆたと輝き 玉敷きつめて白く その水の濁れるを 吸っては吐き 吸っては吐き 捕はれて幾日(ひ)すぎにし 粛として音もかすかに 昼はひねもす夜もすがらに 赤きはひれほそく 黒きはまなこつぶらに なよなよと舞ふばかりなる・・・ (昭和二十八年八月)