祈り
ひからびた唐もろこしの葉っぱが
だらだらと首をふり
いちめんに黄色っぽい畠に立って
まぶしい夕ぐれを眺めている人よ
忘れ去った五年の月日が
ぐっと身近に迫るように
雲があなたを吸いよせるのか
ものがなしい日でりの空に
むらさきの雲がただよい
死んだおふくろを見つめる眼に
ふしぎな灰いろの動くものが現れ
それは次第に量を増して
ぼうばくとしたあの無数の
さざなみのような雲を蹴ちらし
雨を呼び雷をともなって
いっさんに駆け降りてくるではないか
ああ あの遙かな松林のあたり
むしばまれた胸に食い込むように
疲れ果てたあなたの瞳に
ぎらりと映るぶきみな影だ
頬骨のとがった蒼ざめた人よ
いっしんに夕ぐれを見つめている人よ
(昭和二十六年十一月)