鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

盲目の思想

雲よ

きれぎれの思想を発散させ

片輪のよろこびを押売りしながら

どうしてそんなに気取っているのだ

 

蠅が玉子を生みつけるよりも

もっと簡単に生まれ

あぶらぎって

ぎらぎらと嘲笑う太陽と結婚する

盲目のいきものよ

 

ぼろぼろの白骨が

みずみずしい血潮でぬりかえられても

あらわな肌を気にしながら

踊ることをやめない狂女よ

 

雲よ

おとろえゆく貴族よ

随うものすべてに十字を切らせ

一切流転の見本となって

お前は尊大に飛ぶ

 

ほろびゆく古い世紀

唯我蒼穹独尊天南無広大雲天女

去れ!

 

(昭和二十六年六月)