鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

雑草

コンクリート塀のうす暗い影の中から

やせた雑草がヒョイと眼をさまし

春にむかって大きなあくびをする

 

ふうわりとした光線のなみに

ひょろひょろの地肌をのぞかせ

ごつごつした小石や瓦のうえに

のびきれないしなびた影をつくり

雨にうたれ雪にたたかれ

死にもしない生き方をして

 

いっしんにあくびをしている

 

(昭和二十六年四月)