手記「きけわだつみのこゑ」に寄せて
「わだつみのこゑ」 眠れぬ夜を 読みゆけば ごうごうとして 響きくるもの
さんさんと 涙ながれて 如何ともする すべ 知らず 遺書を わが読む
学半(なか)ば 筆折り 剣(つるぎ) とりはきし ああ 学徒兵 若かりしかな
新しき世は 来りけり わだつみに ほろびし人の 遙かなるかも
たらちねに 妹(いも)に 幼なに 切々の こゑの叫びは いまぞ聞ゆる
弾圧の 嵐のまへに 弱々しき 日本人われを 省みんとす
流されし血潮 ふたたび 流すまじ 人こぞり立て 一九五〇年
(昭和二十五年六月)