鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

春日遅々

菅の根の

ながき春日を

ひたごころ

ひとりしあれば

欲しきもの

更にいまなし

 

うらうらと

照る日の部屋は

風のねの

こそりともせず

はるかなる

人ぞ偲ばる

 

うとうとと

春日をねむる

うらさぶる

こころもなくて

白ひかる

子猫のごとく

 

しんかんと

ま昼のなかに

ひとりして

畳にふせば

忘れけり

夢もうつつも

 

(昭和二十二年四月)