鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

安岡正篤先生

一冊の 本を求めて ひもすがら 神田の街を さまよひにけり

 

ほとほとに 疲れて いそぐ わが腰の 雑嚢にあり 漢詩読本

 

世をおさめ 民を救はむ はげしくも 燃え立つ命 経世嗩言

 

わが膝と 膝をまじへて ひたぶるに 教乞ひたし 安岡の大人(うし)

 

今の世の 哲人なりと 友のいふ 大人(うし)の齢(よはひ)は 五十に満たず

 

東洋倫理概論といふ 世を興す 書(ふみ)を得てより 半年すぎぬ

 

(昭和二十二年一月)