縁に机を出し平家を朗読していると、何か微かな音が耳に触れた。ブブ、ブ、ブンブン、音は慥かに私の胡座をかいた左膝のあたりでしている。私は読みかけの本から、そこへ眼を写した。硝子戸の敷居に二本の線がある。その真ん中に小さな蟲が動いている。蚊で…
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。