鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

第三次ブーゲンビル沖航空戦

十一月十四日ラヂオ報道をききつつ詠める 大勝の報道(しらせ) けふもあり 一度(ひとたび)は よろこびに満ちて 胸ふるへしが 火となりて 敵艦(あだふね)めがけ 自爆せる わが友軍機を いま眼に見たり 愕然と いま眼に見たり 轟沈(ごうちん)の しらせ…

鎌倉史跡詠

鎌倉宮にて 悲しきや 八畳あまりあるといふ み洞をぐらく 見きはめられず 思ふだに いたはしきかも 天つ神日つぎの皇子の たほれ給ひぬ 時ならば 大八州国しろしめす 日の皇子なるを ああ 時ならば いきどほり極まりて いま ひれ伏せば 吉野の皇子の み声き…

応召

大方は うつりゆきけり 五年(いつとせ)まへの その面影の いささかもなし 軒なみに 征(ゆ)きしと 小母の語るをば 殊更に聞く ふるさとの家 万歳の声 ひびきけり この村の 最後のひとり 今 征きたるか 世のうつり早きを 思ふ そのかみの 腕白小僧が 飛行…

S君に自覚をすすむる歌

朋友S君一日わがもとに歌稿を送り来るなかに 一女性に捧ぐる歌あり大凡十篇なり その女性はわれ知らざるも 同君の意中の人たり されど彼には故郷に約せし人ありて 近きにめとらんとす よってこの歌を送る 大天地 ただ一人の 妹(いも)なるに 何とて よその…