鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

2017-12-01から1ヶ月間の記事一覧

出征する同志に

川上茂市兄に いま更に 何をか言はむ み戦(いくさ)に 征くてふ 君は 君にしあれば (昭和十九年三月) 山本繁隆兄に さくら花 背に負へる君 日の本の 神の怒りを そのままに 征け (昭和十九年十二月) 斎藤良雄兄に まつろはぬ 夷(えびす) ことごと 骨…

出陣の賦

- この一篇を相楽(さがらか)の同志 神谷博君に献ず ー 神武創業の源にかへさんとする 帝国が悲願 漸く近きに成らんとして さんさんたる太陽昇天の朝 草莽の臣 此方に再び令状を拝す 感全身にみなぎりて 意述べんとして述ぶるに能はず 噫我二十有四歳 故あ…

むかしがたり

むかしむかしと ゐろりべに むかしがたりを するおきな いとどかみさび みづからの かたるおきなに にたるかな かのそふかたる くちもとの しらひげひそと みつめいる をさなわらべの まろきめも むかしがたりに にたるかな ぱちぱちぱちと おとたてて もゆ…

安岡正篤先生

一冊の 本を求めて ひもすがら 神田の街を さまよひにけり ほとほとに 疲れて いそぐ わが腰の 雑嚢にあり 漢詩読本 世をおさめ 民を救はむ はげしくも 燃え立つ命 経世嗩言 わが膝と 膝をまじへて ひたぶるに 教乞ひたし 安岡の大人(うし) 今の世の 哲人…

春日遅々

菅の根の ながき春日を ひたごころ ひとりしあれば 欲しきもの 更にいまなし うらうらと 照る日の部屋は 風のねの こそりともせず はるかなる 人ぞ偲ばる うとうとと 春日をねむる うらさぶる こころもなくて 白ひかる 子猫のごとく しんかんと ま昼のなかに…