鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

あとがき

戦死せし 五来川上斎藤よ わが青春の 糧たりし友よ この詩集を思い立ったとき、敗戦まえに詠んだ作品は全部除くつもりで読み直してみると、そこには、かつての私にだけあって今の私にはないものがあると、改めて思い知らされた。今の私にないのは自ら捨てた…

みいくさびと

・・・S兄に捧ぐ あまねくてらす つきかげに おほひてあまる くろくもを うちはらはむと みいくさに めされゆくなる ますらをの あかきこころの たふとさは なににたとへむ すべもなき そのゆかしさと きよらさを はなにもとめば さくらばな はるまださらぬ…

見渡すかぎりの人の波である この広いスティションは 出征兵士で それを送る人で 正に立錐の余地もないほど ギッシリと埋まってゐる 波 波 波である 私はその人波の中を 轟々たる 話声 雑音 騒音の中を それらの 尊い 喜ばしい お目出たい喧噪の中を もまれ …

神兵讃仰賦

アッツ島に散りゆける神の兵 二千を思ひて作れる 天地(あめつち)の 極まるところ 膚(はだ)さす 荒ふく風の いや更に 膚さすところ 凍てつきの 涯なる山の いや更に 凍てつくところ 冬籠(ごも)り 春去りくれど 吹ききたる 風なぎもせず 氷柱(つらら)…