第三次ブーゲンビル沖航空戦
十一月十四日ラヂオ報道をききつつ詠める
大勝の報道(しらせ) けふもあり 一度(ひとたび)は よろこびに満ちて 胸ふるへしが
火となりて 敵艦(あだふね)めがけ 自爆せる わが友軍機を いま眼に見たり
愕然と いま眼に見たり 轟沈(ごうちん)の しらせに続く 自爆三十機
憤り 胸をつんざき 術(すべ)もなし わが三十機 未だかへらず
自爆なり ああ自爆なり しかありて 敵(あだ)の艦船(ふねぶね) うち潰えしを
ふるへつつ 自爆てふ声 耳をつき 悲しとも また憤りとも
高鳴りて 血こそ荒れけれ 三十の わが友軍機 未だかへらず
黙然(もだ)ありて わが正しきか はらからは 火と燃えて いま命死せしを
大いなる勝の 報らせなり 人思へ おのが生活(くらし)を 死せし戦友(とも)らを
(昭和十八年十一月)