鏡真人作品集

大正11年生まれの鏡 真人(きょう まさと)の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを、詩や短歌で綴っています。

短歌

秋山賦

おもおもと 霧煙る朝の のぼり路を 汽笛するどく 鳴りわたりゆく ゆたゆたと 日の輝きに 紅葉せる 石ころ路を 登りゆくかも 赤き山が 聳えたつ見ゆ この山の 中腹にして 雲はおこらむ みづうみは 眼のしたにして開けたり このすすき野の 穂のひかりかも さん…

病みしとき

紅く大きく ダリヤ花咲く 家の土 ひさびさに踏む 幼な子抱きて 子どもらは 看護婦などにせぬといふ声 ものあらふ音に まじりて聞ゆ ブルドーザの ひびき止みゆきし 安静時 ほそく澄みつつ 風鈴鳴るも 退院を 許されざりし 少年の 声泣きやまず 暑き病舎に 平…

坊っちゃんに寄す

先頃テレビ文学館なる連続放送あり 夏目漱石作坊っちゃんなり 原文通りの朗読なりしが 少しの無理もなく現代に通用するを知り改めて感嘆せり また風間完画坊っちゃん像も極めて秀逸なり 眉あげて 昂然と立つ 然れども 幼さ残る 坊っちゃんの顔 坊っちゃんは …